イノリ…10
僕が彼女を愛したのは、知らずとこんな一面を好いていたからだろうか。
正しいこと、間違ったことを、誰にでも告げることができる勇気を持っているから。
「キミを愛してよかった」
僕は人間になれた。
キミを愛することで、沢山学んだし、救われた。
「もう同じ過ちは繰り返さないよ。誓って」
大きく目を見開いている彼女に、僕は微笑んだ。
「リリー、キミが幸せになれるように、僕は心から祈ってるよ」
白い柔らかな肌に、真紅の髪。
全てを抱き締めたいと願うけれど、僕には無理だから。
だって、初めて思ったんだ。キミに僕はふさわしくないって。
「ありがとう、リリー」
手の届かない花となってしまったけれど、愛し続けよう。
気持ちだけは届くと信じて。
「…私の意見を聞いてくれる?」
「え?勿論だよ」
「あなたが好きよ、ジェームズ」
聞き間違いかと思った。
「だからもう、私を離さないで」
「っ…勿論だよ!」
一つの過ちは、僕に最高の幸福を与えた。キミの為に祈ろう。
共に幸せになれる日々を――…
(end)