イノリ9

 

 

「それが何だっていうの?」

真相を話した僕に向けての第一声は、この一言。

「キミにとってはどうでもいいんだろう。ただ、僕は
「私には、あなたがただ怖じけ付いてるようにしか聞こえない。例えあなたが死んだとしても、素晴らしい人の業績は、永遠に残っていくものよ」
「僕は素晴らしい人間じゃない」
「あら、さっきまでの自信はどこへ?とにかく。あなた人間でしょう?」

いきなり、何という質問だ。
答えを聞くにはお粗末な問。

「当たり前じゃないか」
「じゃあいいじゃない。監督生になれなくても、あなたはジェームズという人だから。ちゃんとした人間でしょう?」

当たり前だった。
僕は今まで、自分で存在を認めて欲しいと願いながら、自分自身で存在を否定していた。
完璧な人間なんて、いるはずがないのに。

「あなたがこの世に生を受けた、それがあなたの存在を認める証なのよ」

僕は今初めて、本当の僕であると思えた。
僕自身が、自分を認めることができたから。