赤い華17

 

ジェームズが呟いた言葉には、呆れと、戸惑いの両方があった。
「立ち聞きするつもりはなかったのっ…ただ…タイミングが掴めなくて…」
聞かれてしまったものは仕方がない。とりあえず、確認に入る。
「何を聞いたんだい?」
いつもとは違う、厳しい口調。
「秘密の…守人のことっ…」
リリーが脅えている。あの、レイブンクローのマドンナ、リリー.エヴァンスが。
ジェームズは険しい表情で、何かを考えた後、リリーに視線を向けた。
「怖がらないで。ごめんね…少し気が立ってただけだから」
それでね、と話題を展開させる。ジェームズ自身、これには驚いているようだ。
「あのさ…忘却術をかけるのと、キミが口外しないのでは、どっちがいいかな?」
選択させようというのだ。何も…ジェームズが狙われていることすら知らなかったリリーに。
「おい、ジェームズ…」
「黙ってろ、シリウス」
きっと、ジェームズはあの数秒の間に、即座に計画を変更したに違いない。
リリーが、もし…忘却術を選んだなら、恐らくジェームズは、リリーを諦めざるをえない。
一種の賭けだ。
「…言わないわ。絶対。だから…あたしも協力させて?」
「えっ…?」