赤い華5

 

「具体的には特にない。ただ…僕の存在を、彼女の中で大きくしてほしい」
それこそ、どんな感情を抱かせてもいいのだと言う。
「嫌いでも?」
シリウスが確認する。
ジェームズは苦笑いをしながら頷いた。
「好きにこしたことはないけどね。仕方ないさ」
どれだけ自信があるのか。嫌いから好きへ、心を変化させることができるというのか。
「わかった。出来るだけ努力はする」

レイブンクローの談話室。
ジェームズ一行は、リリーを探していた。
「リリー?待って。今呼んで来るから」
一人の女子生徒を捕まえて、ジェームズはリリーを呼んで来るよう頼んだ。
ジェームズとシリウスのおでましだ。断れるはずがない。
「やぁ、リリー・エヴァンスさん?」
とびきり紳士的な表情をする。
それがリリーには気に入らなかったらしく。
「何か用事?」
態度が冷たい。ジェームズはなおめげずに話しかける。
「次のダンスパーティーの相手を探してるんだ。よければ僕のパートナーになってくれないか?」
シリウスは、ダンスパーティの存在を忘れていた。女子が蟻のように押し掛けてくる、忌々しい行事だ。
「受けなよ!あんたまだ誰とも約束してないじゃない?」
先程の女子生徒が促す。
リリーは、余計な事を…というふうに、彼女を見た。