赤い華9

 

とうとう来てしまったこの日。
リリーは女子寮の自分の部屋に隠れていた。
「ちょっとリリー?もうすぐ来るんじゃない?」
同じ部屋の女子が、リリーをせかす。
「放っておいて!あたしあいつの顔なんか見たくない!」
ついにそんなことまで言い出した。
「ここまで来たんだから、そんなこと言わずに…腹くくりなさいよ。女でしょ?」
「だって…何か恥ずかしいんだものっ…」
ダンスパーティとなれば、ドレスを着て、髪を結う。
そんな姿を、ジェームズに見られるのは、リリーにとって恥ずかしいのだ。
「…リリー。それって、ポッターを意識してるってことじゃない?」
「なっ…んなわけないわよ!」
とは言ってみたものの、意識していることには変わりはない。例えどんな感情にせよ。
「…行ってらっしゃい」
呆れた友人は、諦めてリリーを引っ張り出した。
「わっ!ちょっと何するの!」
部屋の入口まで連れて来られたリリー。
「じゃあお願いします☆」
リリーの言うことを無視して、待ち構えていたジェームズに、リリーを預ける。
「ミス・エヴァンス。お迎えに上がりました」